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TRPG情報誌 語り部日報:システム作成の迷宮:第9回
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本号は週刊連載掲載号です。
システム作成の迷宮:第9回:ディベロップメント
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びぜん@備前屋さんによります、TRPG作成の思考法についての全10回の連載
記事です。毎週土曜号に掲載されます。
9:【ディベロップメント】すべてを吟味する者
君は長い苦難を得て最高のルールを手に入れ、誰でも使えるように解析し、
それを簡潔に丁寧に記述した。問題は無いはずであった。
だがそこに、「より良くする者」と名乗る男が現れた。男はあろうことか、
君の宝の欠点を指摘した。当然、君は怒りにこぶしを震わせながら立ち上がる
だろう。
しかし君は、冷静にならねばいけない。彼の言ったことは本当に的外れか?
君の見逃していた欠点ではなかったのか?
本来なら彼は、最初からパーティについていなければいけない存在である。
彼の仕事は多岐に渡る。企画が顧客のニーズにマッチしているか、やりたいこ
とは明確か、ルールはやりたいことにマッチしているか、コンポーネントの編
集はルールの理解を助けているか。
これらのことに対して、デザイナーの意図を理解し、軌道が外れそうなら修
正し、迷いが生じたら根拠のある解答を示せる者。それが「より良くする者」。
つまり「ディベロッパー」である。
聞きなれない言葉だと思われる。だが私は、ディベロッパーこそが、これか
らのTRPG作成において必要になっていく存在であろうと考える。
ディベロッパーはデザイナーではない。デザイナーが船を導く羅針盤だとし
たらディベロッパーは星である。迷った時に指標を示す存在である。その指標
には、常に明確な根拠が提示されなければならない。
ディベロッパーはデザインをしない。ただし、デザイナーと同程度以上に、
デザインに関する知識を持っていなければならない。デザイナーがそれを聞い
て納得できるだけの知識と経験が要求される。
ディベロッパーはできる限り自分を殺さねばならない。デザイナーの意図を
明確にし、その意図がよく再現されるようにするのが仕事である。自分の色が
表に出すぎては、デザイナーの意図がボケてしまう。
今までは、デザイナーがディベロッパーと似たようなことをしていた。ある
意味でデザイナーは、システムに対する神であった。その要素が悪影響を及ぼ
すことが明確であるにもかかわらず、デザイナーが了承しなければそれはその
ままであった。デザイナーは専制君主であり、かつ暴君であった。
それはつまり、彼がディベロッパーとしての地位を手放さなかったからに他
ならない。
しかしこれからは違う。デザイナーは君主ではあるが、暴君とはなりえない。
デザイナーは、ディベロッパーが常に行動を監視することを許可せねばならな
い。彼は民衆と貴族の橋渡しである。彼の意見は(時に辛らつな)民衆の意見
である。
君はディベロッパーの意見を謙虚に受け止めなければならない。勿論、納得
いかなければ反論をしても良い。ディベロッパーは聞いてくれるだろう。そし
て明確な解答を示してくれるだろう。理論的に納得しかねるという時以外は、
彼の意見に従うべきであろう。
ディベロッパーはまた、それを言ってなお信用されるに足る存在でなければ
ならない。信用されないディベロッパーに価値は無い。彼らが売るのは、成功
へのより確かな可能性である。物理的に存在する何かではない。よって、信用
を失ったディベロッパーは、即刻解雇されてしまうだろう。
しかし、それさえ乗り越え、信用に足るディベロッパーを見つけることがで
きたなら。
その存在こそが、より素晴らしい宝への、最後の鍵となのである。
さあ、冷静になって先ほどの男の声に耳を傾けてみよう。本当にそれは変更
すべき点なのだろうか。納得がいかないなら、彼に質問するといい。明確な答
えが返って来て、納得のいくものであるなら、彼は信用に足る。彼の存在は、
君にとって素晴らしい財産となるだろう。納得いかないならば彼を追い返せば
よい。冷静に判断することだ。
彼は素晴らしいディベロッパーであった。彼の助言を得て、君の宝は更に輝
きを増したように思えた。
君は早速、この宝を皆に使わせ始めた。ほどなくいくつかの(ディベロッパー
も見落としていた)欠点が見つかったが、それはすぐに改良された。賞賛は日
に日に大きくなっていった。そこには君への賞賛も含まれていたが、君は勿論
その賞賛を独占することなく、偉大な仲間と共に分かち合ったろう。
しかし、栄光の日が続く中で、君の心にはまた冒険心が疼き始めていた。君
は冒険者なのだ。また新しい宝を探しに出たい。そういう欲求が高まってきた。
だが、そんな君を見て、「より良くする者」が言った。
「偉大なる冒険者よ。君も、私と同じ道を歩まないか?」
ここまで積んできた君の経験は、若いシステム作成者相手ならば、十分にディ
ベロッパーに足るだろう。若い冒険者は、君の力を欲しているはずだ。
さあ、君には二つの道が開かれた。新しいシステムを作るか、それともディ
ベロッパーとして、若い冒険者を導くか。
君の選んだ道は……。
sfよりコメント
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「TRPG情報誌 語り部日報」編集者より。
ディベロッパーは難しいです。技量や知識がデザイナーより優れていると、
欠点が見えすぎてデザイナーのゲームでなくディベロッパーのゲームとなる危
険性は、気をつけていてさえあります。
私はおそらく基本的なディベロッパーの責務は「切り捨てるべきものを指摘
する」ことなのではないかと思います。どうしてもデザイナーはアイデアをす
べてもり込みたがるものですからね。
さて、次回でこの連載も完結です。どうも転職してから帰宅する頻度から見
て忙しいようですから、うまく第十回が来週に出せるかは不明です。
この連載は全十回のうち九回までを頂いて週刊連載としたわけですが、同様
にまとまった記事で日報読者(TRPG愛好者一般)向けに有用な内容がありました
ら、投稿掲載を打診してみていただければ幸いです。単に広報をするだけより
はずっと、宣伝効果も大きいものと思います。
奥付
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