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TRPG情報誌 語り部日報:#TRPG リレー連載:最近のこんな楽しいセッション
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#TRPG リレー連載:最近のこんな楽しいセッション
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irc.trpg.net の #TRPG の常連による、友達の輪式リレーエッセイ。毎週月
曜号に掲載されます。
今回の担当:tk
RPGとバイトと睡眠に忙しく、授業に出る暇のない大学生
私が所属している大学のサークルは、毎週二回、金曜日と土曜日の午後に活
動している。興が乗れば金曜の夜と日曜にもセッションが開催される。この頻
度で遊んでいると、飽きたりアイデアが枯渇することは避けられない。対処方
法は主にふたつ。新しいシステムの導入と、冷却期間を取ること。前者は即効
性があるが負担が大きく、後者は遅効性だが負担は小さい。一長一短という言
葉の具体例。
前期末の試験はちょうどいい冷却期間になる。約一ヶ月、RPGから離れて
まじめに勉強しなければならない。そして夏休みの活動が近付くと、大学の近
くで一人暮らしをしている部員は、宿を提供するために部屋を片づける。これ
が毎年繰り返されてきた。八月の第一週。強い日差しと入道雲。海水浴場にほ
ど近い大学の、冷房された教室。こんな環境でのセッションはたとえようもな
く贅沢で、どこかしら切ない。
私の六畳のアパートには、前日から友人Kが泊まっていた。手土産はパスタ
が1キロと2リットルのミネラル・ウォーター。そしてダブル・クロス。彼は
それを差し出しながら言った。
「あしたGMやってくれ。おれはプレイヤーがやりたい」
自分が本当にやりたいRPGにプレイヤーとして参加するには他人の協力が
必要不可欠で、それは根回しや穏やかな脅迫や裏取引で実現されることが多い。
それに比べると、Kの態度は率直そのもので好感が持てるものだった。
「きみはやらないのか?」
「その前に、一度はプレイヤーでやっておきたい」
プレイ経験なしではGMしたくない。それは判る。つまり彼は私の能力を信
用している、ということだろう。経験なしでも巧くマスタリング出来る、と。
信用といえば聞こえはいいが、利用しているだけ、とも言えた。私は煙草に火
を付ける。Kは煙たそうに眼を細めている。その眼はこう語っていた。
“出来ないんだったら、無理にとは言わないけど”
これを遠慮と呼ぶ人もいるだろう。礼儀と呼ぶ人もいれば、優しさと呼ぶ人
もいる。気配りとも配慮とも、なんとでも呼ぶことは出来る。そして私はこれ
を“挑戦”と呼ぶ。
ルールを理解し、ワールドを把握し、シナリオを作成し、プレイヤーに配る
サマリを書き、必要な部分をコピーする。所要時間と残り時間を計算する。不
可能ではない。日報での紹介も読んでいた。そして私はRPGに飢えていた。
未知のシステムの魅力に抗うには渇きすぎていた。挑戦されて引き下がるには
プライドが高すぎた。断ることは出来ない。煙草一箱と珈琲四杯、そして小銭
が少々で準備は完了した。
※
普段の活動には滅多に出てこないOBが二人。後輩が二人。先輩が一人。そ
してK。初セッションの人数としては多いが、新しいシステムに積極的に参加
するメンバーが揃った。事前説明は滞りなく進む。“はじめてのシステムでの
セッション”という状況に慣れていることもあるが、システム自体の平易さも
大きい。
シナリオの舞台は、季節にふさわしく沖縄。観光で、仕事で、この南の島を
訪れた人々が次々と行方不明になっていく。いなくなった、大切な人を探し求
めて駆け回るPC。行けるところは行き尽くした。どこにもいない。
『沖縄最大の犯罪組織を知らないのか? 米軍だよ』
『……基地か!』
実在する団体を使うと説明する必要がない。そして架空の団体よりも衝撃が
大きい。冗談にならないこともあるので取り扱いには注意が必要だが。
一行は基地に潜入し、囚われていた人達を助け、脱出する。戦車と米軍の特
殊能力者が行く手を阻む。生半可な攻撃で壊せるほど、戦車は脆くない。結局、
指揮官である能力者を倒して逃走したところで終了。後日談として、UGNと
いう組織が米軍と交渉し揉み消し、PCは組織に協力する義務を負った、と付
け足してセッションは終了した。
プレイヤーは満足した様子だった。GMとしては反省点もあるが、それが次
への意欲をかき立てた。大雑把に言って、成功だった。サークルではじめてプ
レイされるシステムのマスタリングには、ある種の責任がつきまとう。そのシ
ステムの印象が、初回のセッションの出来に大きく影響されるからだ。その意
味でも成功だった。
久しぶりのセッションを、はじめてのシステムで、きちんと準備して、気合
い充分で遊んだ。これだけ揃えば怖いものはなにもない。そういう一日だった。
それから二ヶ月が過ぎた。後期の授業が始まった。半袖が長袖になった。空
が高くなった。入道雲が鰯雲に変わった。そしてKは、いまだにダブル・クロ
スのGMをしていない。
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sfよりコメント
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「TRPG情報誌 語り部日報」編集者より。
こういう文体もいいものですね。オチまであるし。
奥付
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